マメ科植物と根粒菌による共生窒素固定を研究する理由

世界の人口は1940年代から爆発的な増加を遂げましたが、この増加は工業的窒素固定によって合成された化学窒素肥料の使用量の増加とほぼ軌を一にしています。
つまり農地への大量の合成窒素肥料の投入が今までの人口爆発を支えてきたわけです。
一般の人にはあまり知られていませんが、ハーバー・ボッシュ法によっておこなわれるこの工業的窒素固定では、多くの化石燃料が消費され、大気汚染、地球温暖化等さまざまな環境問題の原因にもなっています。

ハーバー・ボッシュ法

そしてこれからも世界人口の増加傾向は変わらず、2050年には97億人に達すると予測されています。
これは今後も大量の化石燃料を消費する工業的窒素固定が継続されることを意味しているのです。
主要農作物の1つであるダイズを例にとると、現在の全世界における子実生産量を維持するためには、最低でも年間360億立方メートルの天然ガスを消費する計算になります。
さらに合成窒素肥料が投入された農地からは窒素化合物が溶出し、土壌疲弊や水質汚濁といった深刻な問題も引き起こしています。このような農業を今後も継続していくことは、先進国の一員として地球の温暖化、化石資源の枯渇、大気汚染等の諸問題の解決に取り組む我が国の姿勢とは明らかに逆行していると考えます。
そこで注目されるのが共生窒素固定なのです。