基礎知識

窒素と生物

窒素は核酸(DNA・RNA)やアミノ酸、タンパク質などの材料として、生物にとって重要な元素です。
この窒素は大気中に約78%と豊富に含まれていますが、多くの生物はこれを直接利用することはできません。
しかし、一部の細菌やラン藻類は大気中・水中の窒素を生物が利用できるNH4+の形に変換することができます。
これらの生物の働きにより生態系への窒素の取り込みの約65%がなされています。

窒素固定細菌としては根粒菌、放線菌、アゾトバクター、クロストリジウムなどが知られていますが、このう根粒菌(ライゾビウム)はマメ科植物と共生することで有名です。

窒素と生物

◆◇◆用語説明◆◇◆

▶マメ科植物とは?
1万8,000種が存在し、ダイズやエンドウなど私たちが普段食べている穀物やアルファルファなどの牧草、またレンゲやクローバー(シロツメクサ)なども含まれます。

▶共生とは?
種の異なる生物間で見られる相互関係の一つで、特にお互いが利益を得られる関係(=相利共生)にある場合をいいます。(cf.片利共生、寄生)

▶根粒菌とは?
根粒菌はマメ科植物の根に根粒を形成し、その中で大気中の窒素をニトロゲナーゼによって還元してアンモニア態窒素に変換し、宿主へと供給するいわゆる共生的窒素固定を行う土壌微生物です。

▶菌根菌とは?
菌根菌は、4億6000万年以上前のオルドビス紀の地層から発見されており、植物(藻類)が水中から陸上へと進出した際、植物が水や養分を得る手助けを行いました。菌根菌と植物の共生関係は、はるか昔から今日に至るまで発展しながら維持されてきたと考えられており、現在では陸上植物の約7割と共生関係を築く土壌微生物です。



根粒菌と植物の共生

根粒菌の感染により、植物には根粒と呼ばれる器官が形成され、やがてお互いに物質を供給し合う共生状態になります。(植物種によっては茎粒ができるものもあります)
【マメ科植物と根粒菌の共生の確立プロセス】
根粒菌は根粒の中で窒素固定を行い、植物へアンモニア(窒素源)を与え、植物はそれをタンパク質合成などに利用します。
植物は光合成で作り出した光合成産物(炭素源)を根粒菌へ与え、根粒菌はこれをエネルギーに変えて生活します。

根粒共生

菌根菌と植物の共生

アーバスキュラー菌根菌が植物に感染すると、根に樹枝状体(アーバスキュール)を形成します。(アーバスキュール = 植物と菌根菌が物質を交換する場所)
菌根菌は土壌中の根が届かないところに存在する水やリンなどの栄養分を植物に与え、その代わりに植物は光合成産物(炭素源)を菌根菌に与えます

菌根共生

共生関係のメカニズムが解明されると・・・

 [根粒菌]
● 窒素を固定する能力を強化できる
= 窒素肥料(多くの化石燃料から合成される)の使用量を抑えることができる。
つまり、大気汚染、土壌疲弊、化石資源の枯渇、地球温暖化など解決に対して貢献することができる。
【マメ科植物と根粒菌による共生窒素固定を研究する理由】
● マメ科植物以外の植物に根粒を形成させることができる
= 製造にエネルギーが必要な窒素肥料の使用量を抑えることができる!
つまり、穀物(コメ、コムギなど)の収量増加などに利用することができる!

[菌根菌]
● 根の働きを強化できる
 = 乾燥条件での水、栄養分の吸収を改善することができる
つまり、悪条件での生育を可能にし、収量の増加に貢献することができる!