光環境と植物-微生物共生

~地上部の光環境が植物-微生物共生に与える影響の解明~

研究背景

 農林水産省の「農業労働者に関する統計」によれば、農業就業人口は2015年と2022年を比べると約53万人も減少しています。また2022年における65歳以上の農業就業人口は全体の70%以上を占めており、農業従事者の担い手の減少と高齢化が問題となっています。一方、法人経営体数はここ十数年で2倍以上になっており、農作物の効率の良い生産が求められています。
 こういった背景からも、天候に左右されずに安定した収量を確保できるLEDを利用した施設農業の推進が求められ、植物の生育と光の関係性について研究を進める必要があります。そして、これはマメ科植物においても同様であり、本研究室では「光環境と植物-微生物共生」(共生について→詳しくはこちら)という観点で研究を行っています。

研究内容

 自然界では、植物が同じ場所に密集して生育することがしばしば生じており、このような環境下では植物は光合成有効放射をめぐって競合して根や地上部の構造を調節します。代表的な応答として、避陰反応 があります。この反応では、植物が密集すると、植物の上方向への伸長や光の方向への屈曲など日陰を回避する応答があります。
 他の植物がつくる陰では,クロロフィルにより赤色光が吸収されるため,赤色光(R)の遠赤色光(FR)に対する比が減少します(ここでは、「Low R/FR光条件」と表します)。植物は情報としての光を感知するために幾つかの光受容体を持っており、光受容体の1つであるフィトクロムはLow R/FR光条件を感知して避陰反応を促します。
 本研究室では、R/FR比による調節が植物-微生物共生においても行われていることを解明しました。Low R/FR光条件では、ミヤコグサの根粒数と菌根菌のコロニー感染率が減少します。これは、厳しい光環境におけるコストを削減するための反応であると考えられます(根粒・菌根菌共生は、共生菌に光合成産物を供給する点でコスト)

光環境と共生

 

今後の展開

 本研究では、植物地上部における光環境が植物-微生物共生に影響を与えることが解明されました。今後は、この調整メカニズムを更に解明することで、効率的な作物生産に寄与することが期待されます。また、地上部で受容した太陽光のうち特定の波長が根まで伝達されていることが解明されており、この波長の光が共生菌に与える影響などの解明も行っています。

大型スペクトルグラフ

 

◆研究コラム

▶R/FR比と根粒共生に関する論文
 →こちら

▶R/FR比と菌根共生に関する論文
 →こちら